「猫さまがいれば、家内安全、家族円満」 我が家もご多分に漏れず、このフワフワで気高いお方を中心に世界が回っております。
私たち家族の間に立ち、時に緩衝材となり、時に共通の話題となる、まさに「かすがい」の役割を一手に引き受けてくださっている猫さま。そんな猫さまからの日々の要求は、これまで至ってシンプルでした。
「ごはんを出しなさい(カリカリのお皿の前で待機)」 もしくは、 「トイレを掃除したまえ(砂を激しくかく音)」
この二択。私たち下僕(人間)も、長年の経験からそのサインを即座に読み取り、迅速に対応してまいりました。
しかし、ここ最近のことです。夜になると、猫さまの様子が少しおかしいのです。
いつものごはんの時間でもない、トイレもピカピカ。なのに、リビングを落ち着きなくウロウロと徘徊し始めます。
まずはソファでくつろぐ父の元へ行き、足元にすりすり。「ん?腹減ったんか?」と父が腰を浮かせると、プイッと離れる。違うようです。 次はスマホを見ている母の膝に前足をかけ、じっと見つめる。「あら、おトイレ?きれいよ?」と母が答えても、納得いかない様子で小さく「ンンー」と鳴く。
そして結局、私のところへ戻ってきて、足元にスリスリと体を押し付けたかと思うと、期待に満ちたキラキラした瞳で見上げてくるのです。

「ええと……ごはんでもない、トイレでもない。一体、何をご所望で……?」
家族全員が顔を見合わせ、猫さまの意図を測りかねて困惑していました。時刻はそろそろ人間も寝支度を始める頃。
その時、ふと一つの仮説が頭をよぎりました。
「もしかして……眠い、の?」
まさかとは思いつつ、私はしゃがみこみ、「はいはい、もう寝んねの時間ですかー」と猫さまを抱き上げました。すると、いつもなら「離せ」とばかりに暴れることもある猫さまが、今日はおとなしく腕の中に収まっているではありませんか。
そのまま寝室へ運び、私のベッドのふかふかの毛布の上にそっと下ろすと……。
「……ストン。」
本当にそんな音が聞こえたかのように、猫さまは瞬時に脱力。丸くなることもなく、香箱座りをするでもなく、幸せそうに目を閉じ、数秒後には小さな寝息が聞こえてきました。
え、まさか、本当に? あんなに家族の間をウロウロしていたのは、「もう寝る時間だよ!誰か私をベッドまでエスコートしなさい!」という巡回連絡だったの……!?
衝撃の新事実発覚です。 ごはん、トイレに加え、まさか「寝かしつけ」まで要求されるようになるとは。
ベッドですやすやと眠る天使のような寝顔を見つめながら、私は改めて確信しました。
まあ、いいか。 だって人間は、猫さまに快適な睡眠環境を提供し、健やかな毎日をサポートするために生まれてきた種族なのだから。
新たな重要任務「寝かしつけ係」、喜んで拝命いたします。


