家族の「かすがい」は、一匹の元野良猫さまでした。殺伐とした我が家を変えてくれた、小さな神様の話。
「子はかすがい」という言葉がありますが、我が家にとってのそれは、間違いなく「猫さま」でした。
今でこそ、リビングには穏やかな空気が流れていますが、少し前までの我が家は、お世辞にも「円満」とは言い難い状態でした。
ギスギスしていた、あの頃の日常
以前の私たちは、ちょっとしたことで言い合いになり、つい声を荒らげてしまうことが珍しくありませんでした。
特に私は、いわゆる「ブラック企業」での過酷な労働に心身ともに疲れ果てていた時期。 心に余裕がなく、家の中に流れる空気はいつも重く、トゲトゲしていました。 家族の誰かが発する何気ない一言が、鋭い武器のように刺さる。そんな、休まらない日々が続いていたのです。
「触れない」距離から始まった、奇跡の1年
そんな我が家にやってきたのが、元々は野良(あるいは地域猫)だった猫さまでした。
保護したばかりの頃は、もちろん心なんて開いてくれません。 触るなんてとんでもない。ただ、遠くからご飯をあげるだけの日々。 「この子がいつか懐いてくれる日なんて、本当に来るのだろうか?」 そう思いながら、私たちは付かず離れずの距離で見守り続けました。
それが半年、1年と経つうちに、猫さまの心に変化が訪れました。 少しずつ距離が縮まり、指先で触れられるようになり……。 今では、あんなに警戒心の塊だった子が、家族の誰に「わしゃわしゃ」と撫で回されても、ゴロゴロドルルルルとエンジン全開で喉を鳴らして喜んでくれるまでになったのです。
猫さまが変えた「言葉」の種類
猫さまが我が家の中心に居座るようになってから、驚くべき変化が起きました。 家族の間で交わされる「言葉」の種類が、ガラリと変わったのです。
かつてのトゲのある会話は消え、今、リビングに飛び交うのはこんな言葉たちです。
「見て見て!今日はあそこで日向ぼっこしてたんだよ。偉いねぇ〜」 「名前呼んだらこっち来たよ!天才じゃない?」
いい大人が集まって、猫さまに対して「だだ甘」です。 猫さまが「あくびをした」「伸びをした」 そんな、なんてことのない日常の欠片が、私たち家族にとっての「最高に幸せなニュース」になりました。
私が仕事でボロボロになって帰宅しても、猫さまの温もりに触れ、家族と猫の話をしているうちに、トゲトゲした気持ちがスーッと溶けていくのを感じます。 猫さまは、家族の間にある「見えない壁」を壊し、代わりに「優しい絆」を編んでくれました。
実は、ただの「かすがい」ではなかった……
実はこの猫さま、ただ家族の仲を良くしてくれただけではありません。 以前ブログでも書きましたが、文字通り「父の命の恩人」でもあるのです。

このお話にある通り、猫さまがいなければ、今の我が家の穏やかな風景は存在しなかったかもしれません。
守っているつもりが、守られていた
「保護猫」として私たちが彼を救ったつもりでいましたが、本当に救われたのは私たちの方でした。
ブラック企業での疲れも、家族間の不和も、猫さまという「小さな神様」がそっと癒してくれた。 今日も我が家の猫さまは、一番日当たりの良い場所で、のんびりとあくびをしています。 その平和な姿を見守る時間が、今の私たちにとって、何よりの宝物です。



